病気・ケガ
猫の消化器の病気と治療について
食道や胃、腸などの消化器は、ウイルスの感染や寄生虫などが原因で病気になることがあります。
消化器が病気になると、食欲がなくなったり、嘔吐や下痢などの症状が出て体力が落ちます。痛みなどの苦しい症状や、他の病気を患うことも少なくありません。症状が急激に悪化したり、再発する病気がありますので、獣医師の指示に従い必ず完治させるようにしましょう。
ネコちゃんがかかりやすい消化器の病気には、どのような種類があるのでしょうか。こちらのページでは病気の種類と治療についてまとめました。早期発見、早期治療に是非お役立てください
食道炎
食道炎は、食べたエサを喉から胃へと送る食道に炎症ができる病気です。
痛みが生じるため、ネコちゃんはエサを食べるのが遅くなったり、よだれを垂らしたり、食欲がなくなるなどの症状が見られます。悪化すると、食べている最中に吐き出すようなしぐさが何度も見られたり、嘔吐することがあります。きちんと栄養を摂取できないため、徐々に衰弱していきます。
食道炎は咽頭炎や喉頭炎などの炎症が食道まで広がったり、感染症などが原因で生じることが多い病気です。他にも魚の骨などを飲み込んだ時や、嘔吐した際に胃酸で食道の壁を傷付けるなどして炎症を引き起こすことがあります。
治療の際は、抗生物質や消炎剤などを投与します。普段食べているエサが飲み込めない場合は流動食を与え、衰弱が見られる際は輸液などの治療を施します。
巨大食道症
巨大食道症は、食道が大きく広がるために食べたエサを胃まで送ることができず、エサが食道内で止まってしまう病気です。
そのためエサを食べている途中で飛ばすように嘔吐したり、肺などの呼吸器にエサが入って肺炎を引き起こすことがあります。エサだけでなく水でも同じような症状が出て、脱水症状や栄養が摂取できないため衰弱していきます。
巨大食道症の原因は、食道炎などの病気が悪化することによって引き起こされることが多いです。その場合は、食道炎の治療を引き続き行うことで症状が治まることがあります。食餌を流動食に変え、衰弱が見られる際は輸液などの治療を施します。
母乳を飲んでいる仔猫に発症が見られれば、先天性の疾患が考えられます。その際は治療が長引くことがありますので、早めに動物病院へ連れて行きましょう。
急性胃腸炎
急性胃腸炎は、胃や腸の粘膜に炎症が生じる病気です。
症状が軽度であれば軟便が出ますが、進行すると激しい下痢が生じ、血便が出ることもあります。下痢と合わせて嘔吐が見られると、エサや水の摂取も困難になります。胃の中が空であっても嘔吐しようとするため、胃液などを吐きだし脱水症状を引き起こします。
急性胃腸炎は、発症すると急速に衰弱することが多い病気です。特にウイルスによる伝染性の感染症は、免疫力が低下するなどの症状に発展しやすく命に関わります。症状が出た際はすぐに診察を受けることが大切です。また、腐ったエサや食べてはいけない植物、薬剤などを誤って口にしてしまった際、急性胃腸炎を招くことがあります。
治療の際は、吐き気止めや整腸剤などを使用し、嘔吐や下痢などによって失った水分や栄養を補うために輸液や点滴が施されます。ウイルスなどが原因であれば、抗生物質を処方し、異物が原因であれば手術が必要になることもあります。状態によっては、胃や腸を休ませるために絶食が必要になります。
感染症の種類によっては有効なワクチンがあります。急性胃腸炎などの病気を予防することに繋がりますので、獣医師に相談し、定期的に受けることをおすすめします。また、誤飲・誤食を防ぐためにも自宅内の環境は常に安全を保つようにしましょう。
夏場は特に食餌に気を配る必要があります。新鮮な水を用意し、ネコちゃんがエサを残した際は早目に処分すると良いですね。
慢性胃腸炎
慢性胃腸炎は、胃や腸の炎症を起こし、嘔吐や下痢などの症状が定期的に生じる状態です。
急性胃腸炎をきちんと治さなかったために、慢性胃腸炎に転じるケースが多く見られます。急性胃腸炎に比べて嘔吐や下痢などの症状が軽減します。回復に向かってるように見えますが、炎症は続いていますので治療が必要です。
急性胃腸炎に比べると適量のエサを食べるようになったり、中には嘔吐しないネコちゃんもいますが、多くは嘔吐や下痢などの症状が定期的に現れ、少しずつ衰弱していきます。毛並みが悪くなり、排便に血液が混じることがあります。そのまま治療をせずに様子を見ていると、慢性胃腸炎が胃潰瘍に繋がるなどして、突然吐血するなどの症状が出ることがあります。
治療の際は、原因によって様々な方法が選ばれます。嘔吐や下痢の症状を和らげながら、抗生物質の投与や寄生虫の駆除などで原因となっている病気を治療します。慢性胃腸炎は飼い主さんが症状に気付かないことがありますので、普段からエサを食べる様子や排泄物などをチェックすることが大切です。急性胃腸炎を患った際は必ず完治させ、慢性胃腸炎にならないようにしましょう。
胃捻転
胃捻転は、胃が腸と絡み合うなどしてねじれる病気です。
胃の中に食べ物が残ったり、炎症や臓器の圧迫など様々な病気に繋がります。また激しい痛みが生じるため、ネコちゃんの中がショック死する可能性があります。早急に動物病院へ連れて行きましょう。
胃捻転は腹部の腫れや食欲不振、嘔吐などの症状が出ます。食べ過ぎや早食い、胃の中にガスが溜まるなどして胃が拡張したり、過去に腹部の手術をしている場合は生じることがあります。また、急性胃炎や慢性胃炎などの病気も胃捻転に繋がります。
一般的には手術で胃を元の位置に戻します。その際再発しないように、胃を固定したり部分的に切除することがあります。
胃捻転はネコちゃんでもまれに生じますので、腹部の腫れやエサの食べ方などの変化はすぐに気が付けるようにしましょう。早食いはエサの量を小分けにすると防ぐことができますので、飼い主さんがコントロールすると良いですね。基礎疾患が発症の原因に繋がるので、他の病気が発症した際は完治するまで通院するようにしましょう。
肛門脱・直腸脱
直腸脱は、腸の一部が肛門の外へはみ出してしまう病気です。腸と肛門の境目の粘膜が飛び出す程度であれば「肛門脱」、腸の粘膜が出てしまう重度の状態を「直腸脱」と呼びます。
肛門脱や直腸脱になると赤い粘膜が飛び出します。痛みが生じるためネコちゃんはしきりに肛門を舐めますが、腫れたり壊死に繋がりますので、すぐに動物病院へ連れて行きましょう。
どちらの症状も、便秘や下痢などが繰り返されることによって引き起こされることが多いです。また、感染症や寄生虫による病気、胃腸の疾患などで炎症が生じていると肛門脱や直腸脱に繋がります。
治療の際、患部が腫れている場合は冷やすなどしてから元の位置に戻します。再発を防ぐため、状態に合わせて手術を行うことがあります。肛門周辺の皮膚や直腸などの縫合、壊死している部位があれば切除することがあります。
原因となる病気があれば、投薬などで治療を続けることが大切です。慢性的な便秘が見られる際は、繊維質が豊富なエサに切り替えることでスムーズな排便を促し、腸や肛門の負担を軽減することに繋がります。獣医師に相談し、ネコちゃんに合ったエサを与えることをおすすめします。
腸閉塞
腸閉塞とは、腸が詰まるなどして内容物がたまる病気です。腸がふさがれたまま発生したガスなどが更にたまり、腹痛を引き起こします。ネコちゃんは食欲がなくなり、嘔吐や水をたくさん飲むなどの症状が出ます。
主な原因は異物などを誤って飲み込んでしまい、腸をふさいでしまうことです。他にも、腸の運動機能がスムーズでなかったり、炎症や腫瘍などが原因で腸閉塞を引き起こすことがあります。
腸閉塞の治療は、明らかな誤飲や緊急な処置が必要の場合、開腹手術を施します。他の病気が原因で引き起こされている際は、原因となる病気の治療を優先的に行い、経過をみることがあります。
巨大結腸症
巨大結腸症は排便を促す力が弱くなるため、腸の中に便がたまる病気です。残留した便が腸の中で引っ掛かり、更に便が滞っていきます。
便秘になると、トイレに行く回数は増えるのに排便が見られなくなります。次第に食欲がなくなり、嘔吐や脱水症状を引き起こします。便が詰まるため、下腹部を触ると硬い異物を感じることもあります。
巨大結腸症は先天性の発育異常などが原因で、生まれつき排便を促す機能に異常があったり、腸の一部分が狭いことがあります。また事故などが原因で、骨盤を骨折したり自律神経が損傷すると巨大結腸症を発症することがあります。骨盤や脊椎などの変形が原因で生じることもあります。状態によってはすぐに手術が必要です。
脱水症状などが生じている際は、輸液などの治療を施します。その上で浣腸を行い、腸の中にたまった便を排出させる方法が一般的です。
症状を軽減させるには、エサの内容をコントロールすることも大切なポイントになります。便の量が多くなると症状の悪化を招くことに繋がりますので、獣医師に相談のうえ、ネコちゃんに合ったエサを与えるようにしましょう。
以上のように、消化器の病気の多くは下痢や嘔吐、食欲不振などの症状が出ます。痛みが生じている際ネコちゃんは触られるのを嫌がりますので、そのようなしぐさも見逃さないようにしましょう。いつもと様子が違う際はすぐに診察を受けることが大切です。
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