病気・ケガ
猫の感染症と治療について
他の動物に比べ、ネコちゃんは感染症にかかりやすいと言われています。飼い主さんが軽度の風邪だと思っていると、症状が悪化して治りが遅くなったり、最悪死に至る怖い病気です。
家の中で育てているから大丈夫だと思っていても、ネコちゃんが飼い主さんの靴などを舐めたりして気付かないうちに感染症を患うことがあります。
感染症を予防するためにはどのようなことが大切なのでしょうか。こちらでは感染症の種類やワクチンなどの予防についてまとめてみました。
外で放し飼いにしているネコちゃんはもちろんのこと、自宅で育てている飼い主さんも正しい知識を持つことが重要ので、情報収集にお役立てくださいね。
感染症とは何か
感染症とは感染力の強いウイルスや真菌、原虫、微生物によって生じる病気のことです。感染力が強くすぐに症状が悪化する感染症もあれば、感染していても潜伏期間が長く発病までに時間を要するものまで様々な種類があります。
子供の時に感染症にかかっていたけれど、大人になるまで症状が出ないこともあります。症状が出ないので、飼い主さんが気付かないこと多いです。
免疫力の低下やストレスなどが原因で急に発症することがあります。感染症は血液検査をすることで調べることができますので、あらかじめそのような病気がないか、確認しておくとよいですね。また感染症の種類によっては、定期的なワクチン接種によって感染を防ぐことが可能ですので利用することをおすすめします。
ワクチンについて
ワクチンとは毒性を無くしたり、弱めたウイルスなどで作られる感染症予防の薬液のことです。ワクチンを接種することで体内に抗体が作られ、そのウイルスに関係する感染症にかかりづらくなります。
産まれたばかりの仔猫は母親の母乳を通して抗体をもらいます。そのため病気にかかりづらいのですが、もらった抗体は2ヶ月程度でなくなりますので、生後50日を過ぎたら1回目のワクチンを接種しましょう。
ワクチンにはいくつか種類があります。
すべてのネコちゃんにおすすめされているワクチンは、「ネコ汎白血球減少症」「ネコウイルス性鼻気管炎」「ネコカリシウイルス感染症」の3種混合ワクチンです。
1回目に接種した後、4週間ほどしてから2回目のワクチンを打ちます。その後は1年に1度のペースで接種することが一般的です。
また「ネコ白血病ウイルス感染症」を加えた4種混合ワクチンや、「クラミジア感染症」を加えた5種混合ワクチンなどがありますので、ネコちゃんの状態や生活環境を獣医師と相談し、計画しましょう。
ワクチンを接種した後は、アレルギー反応や発熱などが見られることがありますので、状態をよく確認します。ワクチンの効果が出るのは2週間以降といわれますので、外へ出ないように注意しましょう。
ワクチンは副作用など様々な問題が指摘されていますが、感染症の種類によっては大きな効果をもたらします。また、有効なワクチンが開発されていない感染症もあるので、普段から飼育環境を整えるなどして予防することが大切です。生活の変化やストレスなどが原因で発症することがあります。異変に気付いた際はすぐに診察をしてもらいましょう。
感染しているネコちゃんとの接触を避けるため、室内での飼育をおすすめします。ネコちゃんに唇を舐められたり、噛まれたりすることで飼い主さんに感染する種類がありますので、すでに感染症を患っている際は他のペットや飼い主さんへの影響も確認することをおすすめします。
感染症の種類
○ネコ白血病ウイルス感染症
完全な治療方法がまだ見つかっていない感染症の1つですが、ワクチンがありますので予防することができます。潜伏期間が長く発熱や元気がなくなるなどの初期症状がありますが、治まることもあります。しかしその症状の後、リンパ腫や神経症などを引き起こし死亡するケースが多いです。
白血球が減少するため免疫力が落ち、様々な病気や症状を発症させることがあります。ネコ同士のケンカや身体の舐め合いなどによって感染しますので、多頭飼いや自由に外出させている場合は注意が必要です。
治療の際は抗生物質などで症状の進行を遅らせことが可能です。中には感染してもウイルスが体外に出ることで治ったり、ウイルスが潜伏したまま発病しないこともあります。
○ネコ伝染性腸炎(ネコ汎白血球減少症)
うつると危険な感染症の1つです。感染力が強く、急激に症状が悪化しやすい特徴があります。
初期症状では嘔吐や下痢、発熱などが見られます。ひどくなると激しい嘔吐が続き、脱水症状が起きやすくなります。免疫力の低下から他の症状を引き起こすことがあります。
通常はネコパルボウイルスを感染した後、4日前後で発症に至ります。このウイルスは感染力が強いので、人間の靴などから検出されることがあるようです。水分と栄養の補給を第一に、インターフェロンによる治療が一般的です。個体差があり、インターフェロンは数回の投与が必要になることがあります。
ネコ伝染性腸炎(ネコ汎白血球減少症)は3種混合ワクチンの内容に含まれていますので、予防のためにも定期的な接種をおすすめします。
○ウイルス性呼吸器感染症(ネコカリシウイルス感染症、ネコウイルス性鼻気管炎)
別名「ネコ風邪」と呼ばれる感染症です。せきや、鼻水、くしゃみなどの症状が出ますが、軽度であれば3日程度で治ります。他にも口内炎や結膜炎などの症状が出ることがあり、重度になると高熱を引き起こし、衰弱して死に至ります。
ネコヘルペスウイルスやネコカリシウイルスの感染により発症します。栄養剤や食事療法などでネコちゃんの体力を維持することが大切です。3種混合ワクチンの内容に含まれているため、定期的に接種することが予防に繋がります。
○ネコ免疫不全ウイルス感染症(ネコエイズ)
抵抗力が徐々に弱まり、複数の病気を併発する怖い感染症の1つです。完全な治療方法がまだ見つかっていないため、一般的には抗生物質やインターフェロンで症状を和らげるなどの治療を施します。
ウイルスに感染してから約1ヶ月で、発熱やリンパ節が腫れるなどの症状が見られます。症状が治まった後に免疫力が低下し、数年後には歯肉炎、口内炎、慢性的な下痢などが原因で痩せていきます。口臭が目立ち、よだれを垂らすことも多くなります。
血液中の白血球の数が減少するため、他の病気を併発し、亡くなる可能性が高くなります。
○ネコ伝染性腹膜炎
おなかや胸に水がたまる病気です。しこりができたり、痙攣や麻痺が生じ、死に至る怖い病気です。初期症状では食欲がなくなり、発熱や下痢などを生じ、おなかが異様に膨らむなどの変化も見られます。
原因はコロナウイルスによる感染症です。このコロナウイルスには、ネコ腸コロナウイルスとネコ伝染性腹膜炎ウイルスの2つがありますが、ネコ腸コロナウイルスは軟便や下痢の症状が起きても健康なネコちゃんであればすぐに治ります。
しかし、ネコちゃんに体力がなかったり、過度なストレスが原因でネコ伝染性腹膜炎ウイルスに変異することがあります。その際強いアレルギー反応が生じると、ネコ伝染性腹膜炎を患います。
治療では水を抜き、インターフェロンや免疫抑制剤などを施しますが、治すことが難しい病気です。効果的なワクチンがないため、決め手となる予防法はまだ見つかっていません。多くのネコちゃんがこのウイルスをもっているので、発症しないように健康維持や衛生面に気を付けることが大切です。
○クリプトコッカス症
鼻炎や目の異常などが生じる感染症です。クリプトコッカスというカビに感染することで、皮膚病が生じます。
初期症状はくしゃみ、鼻水などが出ますが、悪化すると食欲が落ち痩せてしまうことがあります。皮膚病となり、頭部にしこりが表れたり、まれに目の中枢神経に異常が出ます。
特殊な抗生物質を用いることが一般的です。内科療法を行い、鼻炎、皮膚炎、目や中枢神経の異常にはそれぞれに合った治療を施します。
クリプトコッカスは空気中に存在すると考えられています。健康な人間やネコちゃんへは感染しませんが、免疫力が落ちている時などは注意が必要です。普段から健康面に注意し、きれいな環境を整えておくことが1番の予防となります。
○ネコ伝染性貧血(ヘモバルトネラ症)
免疫力が落ちた時に貧血などの症状が出る感染症です。元気や食欲がなくなり、発熱が見られるようになります。目の結膜や口の中の粘膜が白くなることがあり、状態によっては黄疸や呼吸困難を招きます。
マイコプラズマという病原体やヘモプラズマに感染することで発症します。血液中の赤血球の表面を破壊するのを抑えるために、抗生物質と副腎皮質ステロイド薬などの内科療法が一般的です。
感染経路が明らかになっていませんが、ノミやダニに媒介されることが原因と言われています。
○トキソプラズマ症
トキソプラズマという原虫によって発病します。抵抗力のないネコちゃんに感染すると、咳や呼吸困難、下痢や血便、発熱などの症状が急に発症し、亡くなってしまうことがあります。
感染してもすぐに発症しないことがあり、大人になってから慢性化すると、下痢、目の炎症、中枢神経の障害などの症状が出ます。
トキソプラズマにおかされた小鳥やネズミなどを食べることで感染します。ネコちゃんを外に出した時などは注意が必要です。また妊婦がトキソプラズマに感染すると、胎児に障害が起こる可能性があります。トイレの掃除をする際はゴム手袋を使用するなど、衛生面でも注意が必要です。
以上のように様々な感染症があると言われています。
日頃から健康に気を付け、ワクチンの接種や環境を整えるなどで予防しましょう。感染した際は発病する前に治療の計画を立てておくことで、悪化を防ぐことに繋がります。症状が出た時だけでなく、定期的に検査を受けることが大切ですね。
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